「うちの会社でも副業が解禁されたらしいけれど、実際のところどんなルールになっているの?」
「本業だけでは将来が不安だから、何か始めたいけれど、落とし穴はないのかな……」
そんなふうに悩んでいませんか?
2018年の厚生労働省による「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の策定を皮切りに、近年、名だたる大企業が次々と副業解禁に踏み切っています。総務省の令和4年(2022年)の調査によれば、副業を持つ人はすでに332万人に達し、「一つの会社に尽くす」という働き方は劇的な変化を遂げています。
この記事では、厚労省ガイドラインの具体的な内容や改定の経緯、ソフトバンクやANAなど大企業が導入している制度の「リアルな条件」、そして私たち40代・50代が直面するかもしれないリスクや注意点まで、最新の動向を踏まえて分かりやすく解説します。
あなたの会社でのルール確認や、これからの自律的なキャリアを考えるための判断材料として、ぜひ参考にしてみてくださいね。
なぜ今?厚労省ガイドライン改定と大企業の「副業解禁」の実態
まずは、「いつ、何が起きて、副業がこれほど一般化したのか」という事実関係を整理しておきましょう。
ニュースなどで「副業解禁」という言葉をよく耳にするようになりましたが、これはある日突然起きたブームではなく、国主導の制度改革と社会情勢の変化が組み合わさった結果なのです。
2018年の「副業元年」から現在に至るガイドラインの変遷
日本の働き方において大きな転換点となったのは、2018年(平成30年)1月のことです。
厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、同時に、各企業が就業規則を作る際のひな型となる「モデル就業規則」から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業禁止の規定を削除しました。
代わりに、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という一文が明記されたのです。これが、世間で「副業元年」と呼ばれるゆえんです。
しかし、2018年の段階ではまだ様子見の企業も少なくありませんでした。そこで厚労省は、さらに踏み込んだ改定を行います。
- 2020年9月の改定: 副業・兼業における労働時間管理のルールを明確化。本業と副業の労働時間を通算して管理する簡便な方法などを提示しました。
- 2022年7月の改定: 企業に対し、「副業・兼業を許容しているか」「条件はどうなっているか」という情報を自社のホームページ等で公表することを推奨しました。
これらの度重なる改定により、企業側は「原則禁止」という態度を取り続けることが難しくなり、社会全体で副業を容認する空気が醸成されていったのです。
総務省のデータが示す「副業人口332万人」の現実
この国の動きに連動するように、実際に副業を始める人は増加の一途をたどっています。
総務省が5年ごとに実施している「就業構造基本調査」の令和4年(2022年)版によれば、副業をしている就業者の数は約332万人にのぼりました。これは、前回調査(2017年)の268万人から大幅に増加しており、過去最高の数字です。
特に私たち40代・50代は、教育費や住宅ローン、親の介護など、人生の中で最も出費がかさむ時期でもあります。近年の物価高や実質賃金の低下という厳しい現実を前に、「本業の収入だけに依存するのは心細い」と切実に感じ、動き出す同世代の方が増えているのは、ごく自然な流れと言えるでしょう。
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大手企業はどんな副業制度を導入している?条件と具体例
国の後押しがあるとはいえ、企業が手放しで「何でもやっていいよ」と言っているわけではありません。大企業が相次いで導入している副業制度には、必ずと言っていいほど「条件」や「制限」が設けられています。
ここでは、先行して副業を解禁した大手企業の具体例を見ながら、その中身を深掘りしてみましょう。
ソフトバンク:事前許可制で「本業への貢献」を重視
いち早く2017年から副業を容認しているソフトバンク株式会社では、社員のスキルアップやイノベーションの創出を目的として制度を導入しています。
ただし、誰でも自由にできるわけではなく、事前の許可制(申請・承認)となっています。
主な条件として、「本業の業務に支障をきたさないこと」「会社の機密情報を漏洩させないこと」「会社の利益と相反する業務(競業避止義務違反)を行わないこと」などが厳格に定められています。
また、単なるお小遣い稼ぎではなく、「本業の成長につながるか」「自律的なキャリア形成に役立つか」という観点も重視されているのが特徴です。
ANAグループ:他社との雇用契約(パート・アルバイト)も解禁
新型コロナウイルスの影響で航空業界が大きな打撃を受けた際、話題になったのがANAグループの副業制度の拡充です。
同社はもともと個人事業主としての副業(業務委託など)を認めていましたが、2020年には、他社と雇用契約を結ぶ働き方(パートタイムやアルバイトなど)も解禁しました。
これは、業績悪化に伴う収入減を補填するという側面もありましたが、同時に「社員の多様な働き方を支援し、外部で得た経験を社内に還元してもらう」という狙いも含まれています。
しかし、雇用契約を複数結ぶ場合、労働基準法における「労働時間の通算ルール」が適用されるため、会社側は本業と副業の合計労働時間を把握し、過労を防ぐための厳格な管理体制を敷く必要がありました。
みずほフィナンシャルグループ:銀行業界にも波及する多様な働き方
長らく「副業は絶対禁止」というイメージが強かった金融業界でも、変化が起きています。
みずほフィナンシャルグループは2019年に副業を解禁しました。
こちらも事前申請・承認制であり、「週に〇時間まで」といった労働時間の制限が設けられています。金融機関という性質上、コンプライアンスや情報漏洩に対する基準は他の業界以上に厳しく設定されていますが、それでも「社員の自己実現を後押しする」という明確なメッセージを打ち出しました。
各社の制度から読み解ける共通の「制限」とは
これらの大企業の事例から分かるのは、副業解禁といっても「完全なる自由」ではないということです。
多くの企業では、以下の3点が共通の条件として設定されています。
- 本業専念義務の確保: 深夜労働や過重労働により、翌日の本業に影響が出ないこと。
- 競業避止義務の遵守: 本業の競合となる他社で働いたり、自社のノウハウを流用したりしないこと。
- 守秘義務・信用保持: 会社の機密情報を漏らさず、会社の社会的信用を失墜させるような行為をしないこと。
これから副業を始めようとする方は、「世間が解禁モードだから」と見切り発車するのではなく、必ずご自身の会社の就業規則を隅々まで確認し、必要な申請手続きを踏むことが絶対条件となります。

制度解禁の裏側にある企業側の意図と社会の変化
では、なぜ企業はリスクを負ってまで副業を解禁し、推進するようになったのでしょうか。
かつては「社員の気が散る」「情報が漏れる」と嫌がられていた副業が、今や企業の成長戦略の一部として語られるようになっています。その裏側にある社会的な変化について考えてみましょう。
「囲い込み」から「オープンイノベーション」へのシフト
一つの理由は、ビジネス環境の変化が激しくなり、社内の知見だけでは新しいアイデアや事業を生み出すのが難しくなったことです。
企業は、社員が副業を通じて他社や異業種の文化に触れ、新しいスキルや人脈を獲得してくることを期待しています(オープンイノベーション)。自社の中だけで完結していては得られない「外の風」を社内に持ち帰ってもらうことで、企業の競争力を高めようという意図があります。
終身雇用の崩壊と「自律的キャリア」の要請
もう一つの大きな要因は、企業側が「社員の面倒を定年まで丸抱えする」という終身雇用制度の維持が限界に近づいていることです。
「会社がキャリアを用意する時代」から「個人が自律的にキャリアを築く時代」へとシフトしている現在、企業は社員に対して「会社に依存せず、自分で稼ぐ力(ポータブルスキル)を身につけてほしい」というメッセージを発信しています。
副業解禁は、従業員の自律を促すための「リスキリング(学び直し)」の場として提供されている側面が強いのです。
また、優秀な人材ほど「多様な働き方」を求める傾向にあるため、副業を禁止したままでは人材が他社へ流出してしまうという採用市場における危機感も、解禁を後押ししています。
副業解禁で40代・50代が直面する現実と「落とし穴」
ここまで、副業推進の背景や企業の制度についてお話ししてきましたが、「じゃあ、すぐにでも始めよう!」と飛びつく前に、少し立ち止まっていただきたい事実があります。
ネット上には「スマホ一つで簡単に稼げる」「ノーリスクで安心」といった甘い言葉が溢れていますが、現実には様々なリスクや手間が存在します。特に責任ある立場にいる40代・50代にとっては、致命傷になりかねない落とし穴があります。ここでは、誠実にその事実をお伝えします。
就業規則違反による「懲戒処分」のリスク
最も注意すべきは、自社の就業規則の確認不足です。
「世間が副業解禁だから、うちの会社も大丈夫だろう」と勝手に思い込み、無許可で副業を始めてしまうケースがあります。
もし会社が副業を「許可制」としており、無断で行っていたことが発覚した場合、就業規則違反として減給や降格、最悪の場合は懲戒解雇となるリスクがあります。「バレなければいい」という考えは、本業の安定を根底から覆す危険なギャンブルです。必ず、自社の人事部や総務部にルールを確認してください。
確定申告の手間と「20万円ルール」の誤解
副業で得た所得(売上から経費を引いた利益)が年間20万円を超えた場合、ご自身で確定申告を行う法的な義務が発生します。
よく「20万円以下なら申告しなくていい」と誤解されがちですが、これは「所得税」の話であり、お住まいの自治体に納める「住民税」については、1円でも利益が出れば申告が必要になります。
また、確定申告の手続きのために、日々の売上や経費の領収書を正確に記録・保管しておくという事務作業の手間も増えます。これらを怠れば、無申告として税務署からペナルティ(延滞税や無申告加算税など)を課される深刻な事態につながります。
クラウドソーシングの手数料と悪質クライアント
Webライターや動画編集など、インターネット経由で仕事を受注できる「クラウドソーシングサービス(クラウドワークスやランサーズなど)」は非常に便利ですが、ここにも注意点があります。
まず、報酬を受け取る際には、プラットフォーム側にシステム手数料(およそ10%〜20%程度)が引かれます。例えば1万円の仕事を受注しても、手元に入るのは8千円になるということです。
さらに、匿名性が高い市場であるため、「初心者歓迎」と謳いながら相場を著しく下回る超低単価で労働を搾取するクライアントや、外部の怪しい情報商材の販売サイトへ誘導するような悪質な案件も存在します。「簡単に稼げる」といった誇大広告には絶対に手を出さず、安全な取引先を見極めるリテラシーが求められます。
体力と本業への影響(労働基準法の通算ルール)
そして、同世代として私が最も危惧しているのが「体力の限界」です。
副業としてアルバイト(雇用契約)を選ぶ場合、本業の労働時間と副業の労働時間は通算して計算されます。本業で8時間働いた後に副業で3時間働けば、合計11時間となり、過労死ラインに近づく危険性があります。
雇用契約のない業務委託(Webライターなど)であっても、睡眠時間を削ってパソコンに向かえば、確実に翌日の本業のパフォーマンスが落ちます。本業でミスを連発し、評価を下げてしまっては本末転倒です。
「リスクゼロ」の副業など存在しません。時間、労力、そして法的・税務的な責任を伴う立派な「事業」であることを、しっかりと認識しておく必要があります。

考察:大解禁時代に40代・50代はどう立ち回るべきか
これまで、厚労省のガイドライン改定から各企業の動向、そして副業を取り巻く現実的なリスクまでを見てきました。
長年、多くの方の「教える副業」やスキルシェアを伴走・サポートしてきた筆者(西野真希)の視点から、この「副業大解禁時代」を私たちがどう生き抜くべきか、考察をお伝えしたいと思います。
「時間を切り売りする副業」からの脱却
私見ですが、40代・50代が副業を選ぶ際、最も避けるべきは「単なる時間の切り売り」に終始することだと考えています。
例えば、時給制のアルバイトや、誰にでもできる単純なデータ入力などは、確実にお金にはなりますが、自身のスキルアップにはつながりにくい傾向があります。何より、若い世代と同じように「体力と時間をすり減らす働き方」は、遅かれ早かれ限界を迎えます。
企業が副業解禁に踏み切った本当の意図である「自律的なキャリア形成」に応えるためにも、私たちは「自分の市場価値を高める働き方」を選択するべきです。
AI時代だからこそ光る「あなたの経験(一次情報)」
「でも、私には市場価値の高い専門スキルなんて何もない」
そう思って、自分のこれまでの経験を過小評価していませんか?
現在、ChatGPTなどのAI(人工知能)が凄まじい勢いで発達し、一般的な情報やノウハウなら数秒で出力できる時代になりました。情報そのものの価値はどんどん下がっています。
では、これから先の時代、検索エンジンや読者、そしてクライアントが本当に求めているテキストやコンテンツは何でしょうか?
それは、「生身の人間が実際に経験し、汗を流し、悩み、そして解決したという『一次情報(リアルな体験談)』」です。
長年、特定の業界で働いてきた泥臭い知識、部下を育成する中で直面した人間関係のトラブル解決法、家計をやりくりしながら見つけた独自の投資ルール、親の介護で奔走して得た制度のリアルな活用法……。
あなたにとっては「当たり前の日常」や「ただの苦労話」だと思っていることが、AIには絶対に書けない独自のコンテンツになります。そしてそれは、これから同じ悩みに直面する誰かにとって、喉から手が出るほど「知りたい情報」なのです。
「あなたの当たり前は、誰かの『知りたい』」です。
焦らず、本業の「余白」で種をまく
大企業が続々と副業を推進し、メディアが「副業で月〇〇万!」と煽る今の状況では、なんだか自分だけが取り残されているような焦りを感じるかもしれません。
しかし、どうか焦らないでください。
まずはご自身の就業規則を正しく確認し、ルールを守ること。そして、睡眠時間や家族との時間を削るのではなく、日常の中にある「余白の時間」を使って、ご自身のこれまでの人生の棚卸しをしてみてください。
特別な資格を新しく取る前に、あなたがこれまで生きてきた足跡の中に、必ず社会に還元できる「価値」が眠っているはずです。
社会の変化を味方につけながら、ご自身の心地よいペースで、自分だけの強みを見つける一歩を踏み出していただけたらと、心から願っています。
まとめ
本記事では、大企業を中心に進む「副業解禁」の動向と、その実態について詳しく解説しました。ポイントは以下の通りです。
- 厚労省の推進: 2018年のガイドライン改定(モデル就業規則からの禁止規定削除)を機に、社会全体で副業を容認する動きが加速している。
- 副業人口の増加: 総務省のデータでも副業者数は332万人を超え、40代・50代にとっても当たり前の選択肢になりつつある。
- 企業の制度には制限がある: ソフトバンクやANAなど大企業も解禁しているが、本業専念義務や競業避止義務など、厳格な条件・許可制であることが多い。
- リスクを正しく認識する: 就業規則違反のリスク、確定申告の手間、悪質な案件の存在など、負の側面も理解しておく必要がある。
- 自分の経験を活かす: 時間の切り売りではなく、AI時代にこそ価値が高まる「自身のリアルな経験(一次情報)」を社会に提供することが、中高年の副業の鍵となる。
副業は、収入の柱を増やすだけでなく、あなたの人生の経験を社会に活かす素晴らしい手段です。事実とルールをしっかりと把握した上で、無理のない範囲で自律的なキャリアを築いていきましょう。
よくある質問
自分の会社が副業禁止かどうか、どこで確認すればいいですか?
勤務先の「就業規則」を確認してください。「服務規律」や「副業・兼業」という項目に記載されていることが一般的です。もし就業規則がどこにあるか分からない場合は、人事部や総務部の担当者に直接問い合わせるのが最も確実です。
副業の収入が年間20万円以下なら、税金の手続きは一切不要ですか?
いいえ、手続きは必要です。所得(売上から経費を引いた額)が年間20万円以下の場合は「所得税の確定申告」は不要ですが、お住まいの市区町村へ「住民税の申告」は別途行う法的義務があります。1円でも利益が出たら住民税への影響がある点に注意してください。
就業規則で禁止されているのに隠れて副業をすると、どうなりますか?
無許可で副業を行っていたことが発覚した場合、就業規則違反として懲戒処分(減給、出勤停止、降格など)の対象となる可能性が高いです。悪質な場合(会社の情報を漏洩させた、本業の競合で働いた等)は懲戒解雇となる恐れもありますので、隠れて行うのは絶対に避けてください。
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— 西野 真希

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